黒田東彦

 

Bloomberg:黒田総裁はもうやり切った

TIME、WSJなどでアジア各国の特派員を務めたMichael Schuman氏がBloombergに意見記事を書いている。
現在、北京に本拠を置いているジャーナリストが、欧米メディアとは一味違う意見を述べており興味深い。


黒田日銀の石にかじりついてもやり抜こうという姿勢は称賛に値する。
しかし、そろそろ夢をあきらめるべき時期が来ている。
彼が物価目標を達成することはないだろうし・・・、目標を達成する必要もないんだ。

アジアに長く身を置くシューマン氏がこう書いている。
青い目の国々は、日本の失われた四半世紀を研究し、その原因をデフレと断定し、その対症療法として非伝統的金融政策を考案した。
しかし、自分の身に似たようなことが起こると、問題がそう簡単でないことを思い知らされた。
3度にわたるQEでも物価は思うように上昇せず、物価が上昇しないうちに日本も含めて経済は回復を迎えた。
むしろ最大の脅威は、非伝統的金融政策に出口がないかもしれないことの方に移ってきている。

「日本は現在1980年代以来最長の景気拡大を享受している。
インフレ率は黒田総裁の物価目標のはるか下にあるのにだ。」

シューマン氏はこの不都合な現実の解釈として2つの可能性を挙げる。


  • 経済問題への診断が間違っていた
    日本経済の停滞の原因はデフレではなく、他のこと(過剰な規制、起業家精神の不足、企業統治の貧しさ、壊れた雇用市場、高齢化)にあった。
  • 黒田総裁はすでに成功している
    2%物価目標には達していないが、すでに経済を刺激するに十分なインフレが実現している。

もしも、可能性がこの2つしかないのなら、日本の置かれた状況は悲劇としか言いようがない。
このいずれの場合でも、これ以上の金融緩和は無駄、あるいはそれを超えて有害になる可能性が高い。
もちろん、金融緩和をすぐやめるわけにはいかないが、そろそろアクセルを適度に緩めるべきとなる。
しかし、それが行われる可能性は現状ゼロに近い。

シューマン氏は、年金生活者や国債金利への波及を考えれば、これ以上物価が上昇しない方が日本にとっていいことかもしれないと示唆している。
一方で、景気が減速すれば、日銀は金融緩和を継続するようなプレッシャーを感じるだろうと言う。
シューマン氏は最後に黒田総裁に語りかけている。

2%目標達成の可能性はまだ遠い。
しかし、黒田総裁はぐっすり眠れるはずだ。
夢が実現することはないが、現実の世界では彼はやれることをすべてやり切ったのだから。


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