ローレンス・サマーズ

 

サマーズ:作る仕事を助け、使う仕事を奪う

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が冷徹にトランポノミクスを批判している。
財政政策は変動の幅を大きくし、保護主義は国内の雇用を奪うだろうと警告した。


予算案で謳われた税制については正直批判的な考えを持っている。
あらゆる種類の経済学者が同意する数少ないことの1つが、景気循環に逆行すべきということだ。
景気回復が9年目に入り失業率が4%を切りそうなところで、どうしてさらに刺激策が必要なのか理解できない。

サマーズ氏がBloombergでトランプ政権と共和党の財政政策を批判している。
サマーズ氏は、米経済がとてもいい状況にあると言う。
米国の経済の底力(経営能力、革新的な知識社会、米民間セクターのダイナミズムなど)が顕在化したものだと言う。
こうした高景気の中、なぜさらに景気を吹かさなければいけないのかと疑問を呈す。

「よりよい取り組み方は、いい時に借金を返し、悪い時に借金して支出することだ。
今はいい時だから、政府の財政赤字を大幅に増やすロジックが理解できない。」

ある意味、この発言には驚きも感じる。
サマーズ氏はクリントン政権で財務長官を務めた民主党側の人物。
先の大統領選の頃も趨勢的停滞論を提起し、最後までインフラ支出など財政拡大を求めていた。
そのサマーズ氏が、今では財政再建を求めている。
サマーズ氏は、政権の放漫財政の帰結を予想する。

「長期にわたり金利は上昇し、資産価格は下落するだろう。
さもなくば、特に貿易赤字による不確実さ・リスクが増すだろう。」


こう言いながらも、債券市場が弱気相場入りしたとの見方には慎重な姿勢を続けている。
その背景には、趨勢的停滞をいまだ否定しきれない点があるようだ。
サマーズ氏は、債券の弱気相場入りを確信している人たちには2つの見落としがあると言う。

  • 市場の織り込み: 3回超の利上げはすでに市場に織り込まれており、それが実現してもことさら悪影響は及ぼさない。
  • 構造的要因: 構造的な要因が実質金利を押し下げ、r*(中立金利)を低く維持する可能性がある。

サマーズ氏は、特にリスクの見方について慎重な言葉を選ぶ。
不況の到来時期については、すぐではないが長くも待たないと言う。
市場参加者のリスクへの認識についても、過度に心配する人より過度に冷静な人の方が多いと遠まわしに指摘する。
結果、今は投資家にとって特にいい時期ではないだろうと括った。

こうした環境は、パウエルFRB議長のさじ加減をさらに難しくする。
サマーズ氏は、議長が景気刺激と金融基盤回復の間で難しいバランスを求められることになると予想している。

トランプ大統領が仕掛けた「貿易戦争」の勝者を尋ねられると、その質問自体が非常に重要な観点を見落としていると指摘した。
貿易はWin-Winゲームであり、片方が得をしたら片方が損をするというものではない点を強調した。

米国には鉄鋼を作る仕事をしている人よりはるかに多く鉄鋼を使う仕事をしている人がいる。
関税は鉄鋼・アルミの価格を押し上げ国内市場を保護することには成功するかもしれないが、ネットで見れば仕事を生み出すより奪う方が多くなるだろう。


 - 海外経済 ,