ユルゲン・シュタルク:デフレ・リスクなど最初から存在しなかった

ドイツ連銀副総裁、ECB役員を歴任したJürgen Stark氏が、ECBの金融政策正常化を強く促している。
ドイツ人らしい主張をドイツ人らしい深刻さで綴っている。


「長く続いた低金利と量的緩和は投資家に行き過ぎたリスク・テイクのインセンティブを与えてしまった。
これら政策が長引くほど、世界の金融安定への脅威が大きくなる。
事実とは、超金融緩和がはるか昔に適切に終了すべきだったということだ。」

シュタルク氏がProject Syndicateに書いている。
すでに先進国経済は危機を脱し力強く回復しているのに、危機対応の政策がだらだらと続いているとの指摘だ。
シュタルク氏はECBの置かれた状況をこう主張する。

本当のところ『悪い』デフレのリスク、つまり物価・賃金・経済の自己強化的な下落スパイラルなどユーロ圏全体で言えば一度も存在しなかったのだ。
2014年以来、インフレの急低下がエネルギー・原材料価格の下落によるものであるのは明らかだった。

もちろん、このタカ派的な見方はドイツ人に特徴的なものだ。
しかし、こうした意見を言う人たちは決して希少種とも言えない。
リフレ政策が正しいとするのは決して世界的な真実ではない。
シュタルク氏は、ECBが短期的な物価動向に目を囚われすぎてきたと批判する。


「ECB理事会はGDPと雇用の成長を支えデフレを寄せ付けないために拡張的政策がひき続き重要と確信しているようだが、その蓋然性は低い。
実際、これまでの政策が回復に与えたインパクトについての信頼のおける計測によれば、(インパクトは)おそらく小さめで、間違いなく2015年4月以降の2.3兆ユーロの資産買入れに相当するものではなかった。」

シュタルク氏は、効果に疑問がある一方でコストは甚大と指摘し、深刻なコストをいくつか挙げている:

  • ECBの政策金利がシグナリングの機能を失った。
  • リスクが適切に評価できなくなり、リソース配分が歪み、ゾンビ企業が温存された。
  • 債券市場が完全に歪められ、財政健全化がないがしろにされた。

シュタルク氏はECBの現在の政策を「単純に無責任」と糾弾し、その無責任の起源を1998年のポール・クルーグマン教授による「無責任になる約束」に見出している。
ドイツとクルーグマン教授とは犬猿の仲なのだ。
しかし、その戦いも終わった。
ECBが「無責任」な金融緩和をやめる公算が高まっている。
シュタルク氏は、現行の金融政策を継続した場合の未来を説明し、危機感を煽っている。

「今日、金融政策は財政政策に従属するようになり、各国の中央銀行はますます強まる政治的圧力によって金利を人為的に低くするよう求められている。
最近の株式市場の混乱が示すように、これは劇的に金融不安定化のリスクを増加させる。
もっともっと厳しい市場の調整が起これば、おそらく実体経済に影響する。
その時、各国の中央銀行にはどんな手段が残っているのだろう?」


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