日本銀行

 

インフレと金利上昇に対する感性

米国に端を発したインフレ・金利のオーバーシュート懸念に対しては、多様な捉え方が出てきているようだ。
株価急落の直前、市場では財政インフレに対する心配の声が高まっていたが、最近ではそれさえ楽観視しようというたくましい市場参加者も増えてきた。


連邦政府の財政政策は海図なき領域に入った。
過去は、経済が強まり債務負担が上昇すると、議会は増税と歳出削減で対応した。
今回は逆のことが起こっている。

ゴールドマン・サックスのAlec Phillips氏らの指摘をBloombergが伝えている。
足元で金利が上昇したからといって、すぐさま連邦政府の利払い負担が急上昇するわけではない。
米国債の平均残存期間は約6年であるため、利払い負担の上昇に時間がかかるからだ。
しかし、時間が経つにつれ支払い金利は重くなっていき、GDP成長率を超えてしまうかもしれない。
そうなれば、すでに高水準にある債務対GDP比率はさらに上昇してしまうとゴールドマンは警告する。

米長期金利は年末3.25%へ

現状の財政政策が継続する場合のゴールドマンの試算はこうだ:

  • ネット支払い金利対GDP比率: 2027年までに、1980年代を超え1990年代初めの水準に。
  • 債務対GDP比率: 現在の77%から100%に増大。1940年代・1990年代よりも悪化。
  • 米長期金利: 年末3.25%、その後3.50-3.75%のピークに向かう。

米長期金利(青、左)と米株価(赤、右、自然対数)


ゴールドマンが言及した1990年代とは米長期金利が5-8%程度で推移した時代だ。
同社の3%台のピーク予想がむしろ控えめに見えてしまう。
債券王ビル・グロス氏は、長期金利が3%に達すると、レバレッジのかかった経済にインパクトを与え始め、実体経済に悪影響を及ぼし始めると予想している。

ゴールドマンは、景気拡大期の財政刺激策の例として1970年代のベルギー、1980年代のイタリア、1990年代の日本を挙げる。
結果がベルギーなら良いが、イタリアや日本なら恐ろしいと言いたいのであろう。

トランプ政権の経済不安定化政策

財政刺激に構造問題への効果が皆無とは言わないが、基本的にはその効果は経済安定化であろう。
つまり、金融政策と同じように、景気が冷えれば刺激策を打ち、景気が熱くなってくれば店じまいをするのが基本だ。
しかし、トランプ政権は景気が熱くなる中で減税・支出拡大を行い、さらにインフラ支出まで着手しようとしている。

個々の政策が正しいならばとの前提を付す限り、刺激策が悪いとは言えない。
しかし、景気が熱い中での財政刺激策が《経済不安定化政策》となりうる点には注意が必要だ。
こうした中では、FRBが相反する方向性、つまり金融引き締めに動くのが理に適った話になる。
もしも、トランプ政権がそこまで意図しているとすれば、ファイン・プレーと言えなくもない。
ただし、そうしたファイン・プレーも財政悪化を逃れえないのであれば、結局いつか大きなつけを払うことになる。

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