ケネス・ロゴフ:〇〇大、下暗し

ハーバード大学Kenneth Rogoff教授が、大学の改革を唱えている。
自動化・ロボット・人工知能などが人間の職を奪うことが問題とされている中、あえて大学だけが例外であるべきでないと説いている。

「課題に立ち向かうべきだ。
大学教員は最も先進技術を仕事に取り入れるのに鈍い人種だ。
工場労働者とは異なり、大学教員は組織運営に対して巨大な力を有している。
教員を無視して話を進めようとする学長は、教員が失職する前に失職するのが通例だ。」


ロゴフ教授がProject Syndicateで、大学の一員として自己批判を繰り広げている。
先進的であるべき大学が教育のための技術の取り込みで出遅れている。
大学以外の塾・学校、一部の技術導入に熱心な大学を除けば、大学は変化を拒んでいるとの指摘だ。
ロゴフ教授は、例えばビデオ講義などを導入すれば、大学の生産性は大きく向上するはずと書いている。

もちろん、ビデオ講義は大学教員の職を奪うかもしれない。
退屈な話と板書しかできない教え手は駆逐されるだろう。
特に初等クラスでは人間の講義は不要となり、質問対応・評価のための教員だけで済むようになる。
これを《雇用が奪われた》と言うならそのとおりかもしれないが、民間企業の感覚から言えば回避すべきことではないだろう。
雇用は奪われるが、組織・産業として進歩するのだから。

特に米国では、学生の生計が大きな社会問題になっている。
学費等の高騰により学生の生活が苦しくなり、学生ローンの延滞が急増した。
米政府は2010年ついに民間の学生ローンを肩代わりすることとなったが、米政府が借主になった後も延滞が増え続けた。
大学が生産性を向上させ、学費等の高騰を防げていれば、問題は少しは軽減されていたかもしれない。


ロゴフ氏は、大学が技術導入を積極化すれば経済成長や社会厚生に大きな潜在的効果を与えるはずと言う。

「米国では、第3期の教育(大学・大学院)はGDPの2.5%(約5,000億ドル)を占め、その多くが極めて非効率な使い方をされている。
実質的な費用は税金の浪費ではないものの、今日の若者は今学んでいるより多くを学べていたはずだ。」

大学が生産性を向上させれば、社会の未来を豊かにしてくれるとロゴフ教授は示唆する。
そして、職にあぶれた優れた教員は、大学以外のところで社会に貢献するはずと言う。

「技術・人工知能分野での印象的・継続的進歩を考えると、今後20年のうちに大学が自らを作り直すことなくその役割を果たし続けるのは難しいだろう。
教育の確信は学者の雇用を混乱させるかもしれないが、大学以外での雇用に極めて大きな恩恵をもたらすだろう。
もしも、象牙の塔の中でもっと混乱が進んでいたなら、経済は大学以外での混乱に対してもっと柔軟になっていたかもしれない。」

米国でも人手不足が進んでいる。
今や非効率な産業が人材を抱え込むのは悪なのである。

ただし、何ごとも理想と現実の差は存在する。
大学教員の中に大学に置いておいてはもったいないような優れた人材がいることは間違いない。
しかし同時に、外の社会では役に立たない人も少なくない。
このあたりは民間企業と同じ話なのだ。
生産性をあきらめて個々の組織が雇用対策に励むか、それとも多少のミスマッチを覚悟して大鉈を振るうか。
煎じ詰めればそれだけの話だ。
もしも大学に公費が使われるのなら、ある程度、民間企業とのバランスにおいて判断されるべきなのは当然だろう。


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