欠陥モデルは放置されたまま

ニューズウィーク日本版が「役に立たない?経済学」という特集を組んでいる。
うまく経済の舵取りをしてきたとはお世辞にも言えない経済学者たちにダメを出す内容だ。


その冒頭を飾る記事を『なぜ経済予測は間違えるのか?』の著書もある数学者デイヴィッド・オレル氏が書いている。
自然科学者からの見方がうかがえること、多くの偉大な経済学者が数学者でもあったことを考えると、極めて興味深い文章だ。
そして、オレル氏の主張も極めて明解である。

「高名な経済学者や中央銀行が世界的な金融危機や物価動向さえ予測できないのは経済モデルに欠陥があるからだ」

金融機関が存在しない

では、エコノミストが用いる経済モデルのどこに欠陥があるのか。

経済学のモデルでは、経済は巨大な物々交換システムと考えられており、貨幣や債務は主たる役割を果たさない。
だが、世界金融危機は、まさにこれらの要素によってもたらされた。


金融経済がどんどん大きくなって実体経済から主役を奪ってしまったように見える今でも、多くのエコノミストが用いる経済モデルには貨幣や債務が十分に取り込まれていない。
金融機関はあくまでも仲介者という役割にとどまっている。
確かに、フィリップス曲線を見る限り、どこかで貨幣・債務が大役を果たしているようには見えない。
逆に、貨幣が大役を果たしている貨幣数量説を主張した学者が少なからずいたが、彼らの主張が誤りであったことは壮大な社会実験によって証明済みだ。
もっとも、貨幣数量説とは、そもそも経済モデルのごくごく一部という位置づけのものであったのだが。

リフレ政策が効かないワケ

オレル氏は金融機関がもはや仲介者でない点を指摘する。

「現代の資本主義経済で最も奇妙なのは、流通する貨幣のほぼすべてが、融資という形で民間銀行で作られていることかもしれない。
例えば、ある銀行が住宅ローンを販売するとき、その銀行に預けられている資金をかき集めて貸し出すのではない。
全く新しいファンド商品を作り上げて、それをマネーサプライに追加している。」

預かった預金を貸すという範囲を超えるような信用創造を金融機関は行っているとの指摘である。
それでも、その融資が自宅用の住宅ローンなら経済モデルの中で表現されているのだろう。
しかし、融資先はそういったものにとどまるはずもない。

「創造された貨幣は多くの場合、不動産などの投機的投資へ向かう。
そのためインフレ率に反映されない可能性がある。」

流動性の罠の中で私たちが目にしたとおりの光景だ。
資産インフレは進めど、物価は上昇しない。

(次ページ: なぜ経済学は課題を放置してきたのか)


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